環境への取り組み
国内内航貨物船初のリチウムイオン電池搭載型船「うたしま」を運航
当社の運航する、内航貨物船では初となるハイブリッド船「うたしま」が2019年2月27日、小池造船海運㈱殿にて竣工しました。本船は、湾内航行時・停泊時にCO2を排出しない環境に優しい船であると同時に、低振動・低騒音を実現し、乗組員にとっての働き方改革にも寄与しています。当社グループでは、本船に続く同型船の投入を含め、今後もSDGsへの取り組みの一つとして「ゼロカーボンシップ」の実現に向けた挑戦を続けてまいります。

| 本船主要目 | |
|---|---|
| 船名 | うたしま |
| 船主 | 向島ドック(株)殿 |
| G/T | 499トン |
| D/W | 1,700トン |
| 積載量 | 1,530トン |
| 蓄電システム | リチウムイオン電池 3,500KW/H |
船橋前壁面に入れられたプラグマーク。S.H.Vは「Shore-Connect Hybrid Vessel」を、黄色の四つ星は国土交通省による「内航船 省エネ格付け制度」のハード対策・ソフト対策において15%以上の省エネ性能を認められ、最高の四つ星を獲得していることを表します。

本船の仕様について
ディーゼル主機関(主機)と、軸発電機能を持つ電動推進機の2つの動力源を備え、これにリチウムイオン電池を組み合わせたハイブリッド推進システムを搭載しています。通常は主機で洋上を航海しながら、軸発電機を回転させてリチウムイオン電池を充電します。湾内で主機を停止し、リチウムイオン電池から電動推進器へ電力を供給して航海するときには、CO2排出がゼロになります。
リチウムイオン電池の量や寿命について
リチウムイオン電池のセル24個で構成されるモジュールを2,828個搭載していますが、これはkwで換算するとハイブリッド車2,700台分に相当します。電池の寿命は15~20年とみているので、船がその役目を終えるまで交換する可能性は低いですが、万が一不具合が出た場合には、特定のモジュールのみを交換できます。

電池での走行について
短距離の航海であれば、主機を停止し、電池だけでプロペラを回転して航行できるので、湾内の航行に適しています。さらに電動推進機は操船性に優れているため、安全性も高まります。
燃費削減効果について
運航実績を積まなければ分からない部分もありますが、軸発電機の活用と停泊中はリチウムイオン電池から電力供給することにより約15%以上の省エネを見込んでいます。さらに、陸上の急速充電設備が整えば約30%程度の省エネは可能とみています。
乗組員へのメリットについて
主機・発電機の稼働時間が減少するため、乗組員の負荷とメンテナンス費用の軽減が期待されます。さらに停泊中の船内電力も、発電機の代わりに電池から供給することで無騒音、無振動がかなえられ、睡眠や業務への影響が少なくなります。すでに本船の乗組員も電池で走っているときや停泊中の音の静かさを実感しています。省力化と船内居住環境の良化という特長を生かし、人手不足の船員の確保につながることが期待されています。
天然ガス専焼エンジン搭載船 下北丸竣工
2024年3月19日、石灰石輸送専用船「下北丸」3代目が竣工しました。本船は「夢のある船を造ろう」を合言葉に、天然ガス専焼エンジンとバッテリーによるハイブリッド推進システムを搭載した世界初のばら積み貨物船です。天然ガスタンクを機関室内に配置しつつ先代同等の積載性能を維持し、通常運航時のCO₂排出量は先代と比較し約30%の削減、出入港時はバッテリー航行によりゼロエミッションを実現しています。また、各種自動制御の導入や、船内電力のバッテリー給電による静音性の高い船内環境、快適な居住性も整備し、乗組員の働きやすい環境も追求致しました。

| 本船主要目 | |
|---|---|
| 船名 | 下北丸 |
| G/T | 5,154トン |
| D/W | 5,646トン |
| 蓄電システム | リチウムイオン電池 2,847KW/H |
本船は、内航海運業界が抱える課題を現実的かつ効果的に解決する革新的な船舶として評価され、公益社団法人 日本海洋工学会主催の「シップ・オブ・ザ・イヤー2024」において「小型貨物船部門賞」を受賞しました。
本船の仕様について
天然ガス専焼エンジン(主機)と軸発電機兼推進電動機により洋上を航海しつつ、大容量リチウムイオンバッテリーへの充電を行い、出入港及び停泊時はバッテリーに蓄電した電力により推進、給電を行います。バッテリーにて推進・給電を行っている間は、CO2排出量がゼロになり、港湾内ゼロエミッション運航が可能となりました。
CO2排出量以外の環境改善について
天然ガスを使用することにより、CO2のみならず、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)の排出も従来の重油と比較し大幅に削減されました。また、発電機を使用せずバッテリーによる推進、船内の給電を行うことによる港湾内での静粛性が大幅に向上しました。
天然ガス専焼エンジン以外に特筆すべき技術について
エンジンの燃料となる天然ガスのタンクには、日本製鉄㈱殿が開発した「LNGタンク用7%ニッケル鋼板」を舶用タンク向けに初採用しました。本品は従来の9%ニッケル鋼板と同等の性能を確保しながら、高価なニッケルの使用量を7%に抑えたものです。
乗組員へのメリットについて
停泊中の電力を、発電機ではなくバッテリーより供給することにより船内の静粛性が向上し、乗組員の労働環境が改善されました。また、厳しい海象で知られる津軽海峡の毎日の安定運航を果たすため、ガスエンジンの性能を最大限に引き出す為の各種自動制御を実装したことにより、乗組員にとって極めてユーザビリティが高いシステムとなっております。